【喜多方市】クマ空き家居座り騒動を追跡取材

 昨年12月上旬、喜多方市熱塩加納町の空き家にクマが居座る騒動があった。近隣住民によると、「クマを見かけることはあったが、空き家とはいえ、家の中に入ってくることはなかった」という。そもそも、この時期は冬眠して人里に出てこないという認識の人も多いはず。クマの動きに変化が生じているのは明らかで、注意が必要だ。

行動の変化を踏まえた対応が必要

【喜多方市】クマ空き家居座り騒動を追跡取材 地図 

 昨年12月2日午前、喜多方市熱塩加納町山田にある空き家にクマが侵入していることが分かった。市役所熱塩加納総合支所の担当者によると、「空き家の管理を頼まれている人が、しばらくぶりに行ったら中にクマがいたと市に通報があったのです」という。

 市では警察に連絡すると同時に、防災無線、広報車両、FMきたかたなどで注意を呼びかけた。周辺は、一部立入規制がかけられたほか、不要不急の外出をしないことや戸締りの徹底などが促された。

 建物内のため麻酔銃が使えず、対応に苦慮したが、最終的には花火を使って追い払った。数時間に及ぶ〝捕物劇〟だったという。

 近隣に住む男性はこう話す。

 「この近くでクマを見かけることはたびたびあったが、空き家とはいえ、家の中に入ってくることは今までありませんでした。警察や鉄砲撃ちの人たち(猟友会)が来て大騒ぎでした。(居座っていた空き家の)中には、数日分と見られるフンがあり、4、5日はいたのではないかとのことでした」

 現場は総合支所から直線距離で1・5㌔ほどのところで、約20軒からなる集落。近隣同士は比較的近く、それなりに人の動き(生活感)がある地域と言える。そのような場所に居座るのは珍しいケースのようだ。近隣住民もまさかクマが「お隣さん」として生活していたとは思いもよらなかっただろう。

 しかも、総合支所の担当者によると、カメラを設置して経過を見守っていたところ、「(追い払った)2日後に再度戻ってきた」という。この時は居座ることはなかったが、よほど居心地が良かったということか。付近には収穫されていない柿の木があり、それをエサにしていた可能性が高い。

 近隣の女性住民は「ウチも柿の木があるから怖いですよね。ちょっとした散歩や畑仕事でも、鈴を付けていくようにしています」という。

 一方、前出の男性はこう証言する。

 「あの(クマ居座りが発覚した)数日前、(居座った空き家と)別の場所でクマが柿の木に登っているのを見ました。すぐに通報しましたが、住宅地から離れていないため、猟銃は使えない、と。そうしたら、数日後にあの騒ぎですよ」

 同じクマかどうかは分からないが、付近では数日前、さらに言えば、もっと前から目撃情報があったというのである。

 当時は積雪はなかったが、一般的に冬は巣ごもりして出没しないといった認識の人は多いと思われるが、最近ではそうでもないらしい。前出の男性は「数年前に、雪が降って本格的な冬になってからも、クマが出没したことがある」と証言する。

2つの問題点

クマが居座った空き家
クマが居座った空き家

 ここで注視しなければならないことは2つ。1つは空き家の問題。人が生活していないからクマが侵入・逗留したわけで、人が生活している建物だったら、そうはなっていないはず。

 「この地区も、もともとは30軒以上ありましたが、いまは約20軒で3分の2ほどになりました。しかも、高齢者の一人暮らし、高齢者夫婦だけの世帯が多いから、あと10年もしたら、空き家はもっと増えると思います」(前出の男性)

 こうした問題は各地であり、空き家が増えれば、クマが居座るかもしれない場所が増えるということでもある。昨年3月には、会津若松市の東山温泉街の一角にある菓子店「松本家」にクマが侵入していた。店舗に併設されている空き家に居座ったのだ。こうした例からも分かるように、空き家・廃屋が放置されたら、今後、同様の事件が増えていく可能性はあるだろう。

 もう1つは生態の変化。従来の見識では、人里に居座ることや、冬眠の時期に出没することはなかったはず。今回はその両方を覆すような事態となった。

 県自然保護課は次のような見解を示す。

 「一昨年は全国的にクマの目撃情報、人的被害が多く過去最多でした。エサ不足で冬眠に入らなかったクマがいたことが要因とされています。昨年は天候の関係でエサはある程度あったので、秋以降は目撃情報はそれほど多くありません。ただ、一昨年のこと(冬眠をしない経験)があり、冬眠に入らないクマも存在しているようです。また、農家の高齢化や担い手不足などにより、手入れされていない山林や畑などが増え、山と人里の境目があいまいになっていることから、人里付近に出てくることが増え、それに慣れて、居場所があれば居座るということが起きているのだと思われます」

 県では、クマが出没することを想定して行動すること、クマの活動が活発な朝夕は山に近づかないこと、山(クマが出そうなところ)に行く時は1人ではなく複数人で行くこと、クマよけの鈴などを持ち歩くこと、収穫しない柿の木は伐採すること、畑に農作物を残しておかないこと等々の呼びかけを行っている。

 今回の事件では、幸いケガ人などは出なかった。だが、クマの動きに変化があり、これまでの「こういう場所・時期には出没しない」ということが通用しない可能性があることを認識しておくべきだろう。

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