有名旅館を立て続けに買収した「DMC」の戦略

 会津地方を中心にスキー場、ホテル、ゴルフ場など複数の観光施設を展開するDMC aizu(ディーエムシー・アイヅ、以下DMC社と略)の勢いが止まらない。3月3日に福島市・高湯温泉の旅館玉子湯を子会社化したと発表すると、同16日には郡山市・磐梯熱海温泉の四季彩一力を同31日付で子会社化する方針を発表したのである。

 旅館玉子湯は1868(明治元)年創業。硫黄泉の泉質や自然湧出の豊富な湯量、創業から続く茅葺きの湯小屋などが観光客や湯治客から支持を集める。

 四季彩一力は1918(大正7)年創業。広さ約3000坪の回遊式日本庭園「水月園」があり、昭和天皇、皇后両陛下をはじめとする皇族や安倍晋三首相、英国ウィリアム王子など各界の要人が宿泊した高級旅館として知られる。

 どちらも創業100年以上を誇る老舗だけに、同じ企業による立て続けの買収発表が与えるインパクトは大きかった。

 DMC社は東京都内を拠点とする企業群「ISグループ」の中核会社ISホールディングスの100%子会社。グループを率いる遠藤昭二氏は猪苗代町出身で、会津工業高校卒業後、都内でビジネスに成功した立志伝中の人物である。

 ISホールディングスのホームページによると2024年3月期決算は売上高104億9500万円、経常利益78億1000万円、当期純利益51億7900万円。同グループは証券会社、外国為替証拠金取引、プロバイダー、不動産、M&A仲介、再生可能エネルギー、宿泊・レジャー・飲食など16社で構成。DMC社はその中の1社である。

 それまで会津の観光施設を傘下に収めてきたDMC社は、ISホールディングスが郡山市の「ふくしま逢瀬ワイナリー」の事業主に決まったことを受け今年4月から同社と協業でワインの製造・販売に携わる。初年度は5万7000本を製造する一方、商品力強化、販売手法拡張、新ジャンル開発、IT部門新設、ぶどう栽培農家支援などを展開する。

 初の中通り進出となる逢瀬ワイナリーの運営について昨年12月に遠藤昭二氏に取材を申し込むと、DMC社の遠藤俊平常務から次のような昭二氏のコメントが寄せられた。

 「当社の運営する他の観光・レジャー施設とシナジーを創出できると判断し、経営に乗り出すことを決めました。ISグループのリソースを最大限活用し、DMC社と力を合わせて地域活性化のための共同戦略を展開していきます」

 旅館玉子湯と四季彩一力の買収はこれに続く中通り進出になるわけだが、有名旅館の買収に注目が集まる一方で、経営はどちらも厳しい状況に置かれていたとみられる。

 民間信用調査機関によると旅館玉子湯は売上高3~5億円で推移し、コロナ禍には2000万円の赤字を計上していた。四季彩一力の決算は不明だが、コロナの直撃を考えると経営状態は変わらなかったはずだ。

 不動産登記簿も調べてみた。旅館玉子湯は福島信用金庫が1969年から1993年にかけて七つの根抵当権を設定。七つのうち完済されたものはなく、極度額の合計は14億9100万円に上る。四季彩一力も、福島銀行が設定した極度額1億2000万円の根抵当権と債権額3億0500万円の抵当権、大東銀行が設定した債権額2億円の抵当権、合計6億2500万円の債務がある。

 これらの返済がどこまで進んでいて、DMC社が借金をどれくらい引き受けたのか。遠藤昭二氏のコメントにある「既存施設とのシナジー」で、両旅館をどのように立て直していくのか注目される。

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